「わかる」ことと「できる」ことは全然違います。
今回は両者がどのように違うのかについてです。
あなたはちゃんと違いを説明できますか?
- 「わかる」とは何か
- 「できる」とは何か
- わかるとできるの違いその1:「わかる」は結果で、「できる」は状態
- わかるとできるの違いその2:「わかる」は抽象化、「できる」は具体化
- 忙しい職場でのOJT教育の難しさ
「わかる」とは何か
「わかる」とは、聞いたことを頭で理解できることをいいます。つまりインプットがうまくいった結果「わかる」ようになるのです。
「頭で理解できること」とは、相手の言ったことを、自分の言葉で置き換えられるようになることです。一言一句記憶する丸暗記とは全く違います。「わかる」という状態は、相手が使った言葉でなく、自分の言葉で定義ができる状態を指すのです。
仮に今「足し算ってなーに??」と3歳児に質問されたとします。それをあなたは答えることができるでしょう。「数字と数字、あわせていくつか知りたいときに使うものだよ~」と。
その回答は、あなたが昔、誰かから説明された記憶を思い出しながら教えているわけではありません。あなたが自分なりに、言葉を構築してアウトプットしているのです。これはあなたが、足し算が何たるかを「わかる」状態にあるからです。
「できる」とは何か
一方「できる」とは、やろうとしていることをそのまま身体的に動作として表すことです。言わばアウトプットがうまくいく状態が「できる」なのです。
身体的な動作といわれてもピンとこないかもしれませんね。「腕を真横に伸ばしてください」と言われたとき、その通りにできるか否かということです。
「なぁーんだ、簡単じゃん!」って思うことなかれ。そのまま鏡の前に立ってみると、「全然下だったわw」ということもしばしばです。人の体って実は指示通りに動いてくれていないんですよ。
試してみたら面白いです。膝を90度上げることも、肩幅に足を広げてることも、実は正確にできないことが多いです。それが「できる」の難しいところなんですよ。
わかるとできるの違いその1:「わかる」は結果で、「できる」は状態
これらを踏まえて、「わかる」と「できる」の違いについてお話しましょう。
上記の通り、
「わかる」とは、言葉を置き換えによって、インプットが成功した結果であり、
「できる」とは、身体表現によって、アウトプットが成功する状態です。
「わかる」は結果であり、「できる」は状態を表します。
「わかる」と「できる」は、そもそも同等に比べられるものではないんですよね。。この段階で如何に「わかるとできるをごっちゃにしている」ことがスットコドッコイなことかよくわかると思います。
わかるとできるの違いその2:「わかる」は抽象化、「できる」は具体化
他には、
「わかる」は抽象化であり、「できる」は具体化です。
言語的な処理の後、得られる「わかる」という結果と、「できる」状態から生み出される身体表現という結果。それらの特徴を考えると当然のことでしょう。
基本的に何かを習得するときは、「わかる」を経て「できる」に辿りつきます。
最初は抽象度の高い情報処理を行い「わかる」状態とします。最終的にそれを具体化し、「できる」にしていくのです。
習得時に「わかる」と「できる」は、逆の処理能力が求められるのです。
それぞれ人によってどちらかの処理に特化していたりします。
たとえば、スポーツ選手で「わかる」と経ることなく「できる」に達する人がいます。具体化の達人ですね。
そういった人は言語的には理解できていないけど、なぜか体がその通りに動いてしまう稀有な才能の持ち主です。そんな人は宇宙人なんて呼ばれ方をしたりします。
これは極端な例かもしれません。
しかし「具体的には?」「ざっくり言うと?」どちらの質問が得意か知っておくことで、自分の苦手分野の把握が可能になります。
忙しい職場でのOJT教育の難しさ
「わかる」と「できる」の違いをまとめます。
- 「わかる」とは、インプットが成功した結果であり、「できる」はアウトプットが可能な状態のこと
- 「わかる」は抽象化、「できる」は具体化。
実務を教えてもらうことの難しさはこういうところに潜んでいます。
忙しい職場なら、新人に仕事をさっさと叩き込む必要性にせまられたとき、具体的に何をすればいいかを徹底して叩き込まれることもあると思います。
「この次はこれやって、この次はここを押して・・・」みたく、いきなり具体的な情報を詰め込んで、「できる」を求めてしまっても、人って習得できないんですよね。
先述の通り、まずは「わかる」過程を踏まなきゃいけないわけで、そのためには情報を抽象化しなければいけないからです。
「〇〇な状態にしなくちゃいけない。だから△△する」みたいな順序だった説明が必要なんですよね。本来は。
結局、やることだけは把握したけど、何も「わかっていない」新人が出来上がってしまうわけです。これじゃあ、仕事ができなくても仕方ないんですよね。